前回取り上げたロジクールのMX Revolutionは、高速スクロールを実現するフリースクロールモードと、クリック感のある高精度なスクロールを行う「クリック・トゥ・クリックモード」を実現したMicroGearプレシジョンスクロールホイールを搭載、2つのスクロールモードを自動的に切り替えられるSmartShiftテクノロジーを採用した、デスクトップPC向けハイエンドマウスだった。今回取り上げるVX Revolutionは、同じMicroGear搭載のノートPC用マウスだ。
MicroGearの特徴は、長い文書やスプレッドシートの大量スクロールに適したフリースクロールモードと、フレーム単位でのコマ送りのような精密なスクロールに適したクリックモードを、ワンタッチで切り替えられることにある。フリースクロールモードは、ユーザーがホイール強く弾くことで、最大7秒間ホイールは回転し続け、その間にExcel文書で約1万行をスクロールさせることができる。7秒間回転を維持させるため、フライホイール効果のある金属製ホイールを採用し、滑り止めのラバーグリップを取り付けている。と同時に、ホイール内部にはラチェットのあるハブを用意し、クリックモードに切り替えた場合のカチカチというクリック感を生み出している。
デスクトップPC向けのMX Revolutionでは、サイズ的に余裕があったため、マウス内部にモーターを内蔵し、フリーホイールモードとクリックモードを、モーターの力で切り替えるようにした。この切り替えは、ホイールスクロールをクリックすることで切り替えられるほか、ソフトウェアによる自動切り替えをサポートする。切り替えは、アプリケーションを検出して自動的に切り替えできるほか、アプリケーション内でホイールを回す力の強弱を判別して自動切り替えすることも可能だった。これを同社はSmartShiftテクノロジーと呼ぶ。
ところが携帯性が重視されるノートPCでは、MX Revolutionのようにモーターを内蔵させることができなかった。携帯に便利なようマウスを小型化する必要があるため、マウス内部にモーターそのものを内蔵するスペースがないほか、バッテリーの問題もある。どこでも調達できる単三形乾電池を使うこと、単三形乾電池で実用上問題のない電池寿命を実現するには、モーター内蔵は難しい。
というわけで、VX RevolutionではSmartShiftテクノロジーの採用を断念し、フリースクロールモードとクリックモードの切り替えを底面のメカニカルスイッチで切り替えることにした。これでMX Revolutionの快適機能の1つが失われてしまったことになるが、それでもホイールの機能性という点で、ノートPC用マウスの中でトップであることに変わりはない。
また、同じスペースの問題により、MX Revolutionで用意されているサムホイールの採用も見送られ、代わりにスライド式のズームボタンを実装する。ズームボタンの操作性が悪いわけではないが、やはりサムホイールの方が可動範囲が広く、細かな操作に適した印象がある。
これ以外の機能、検索したい用語をマウスで反転表示したあと、ワンタッチで好みの検索エンジンを使って検索可能なOne-Touch Search、2004年のMX Laser以来のレーザーセンサー、2.4GHz帯のデジタル無線技術など、主要なフィーチャーはすべて盛り込まれている。気になる価格は9980円(ロジクールオンラインストア価格)で、MX Revolutionとの価格差は2820円だ。
VX Revolutionは携帯用のマウスとしては、現時点で最も進んだものに違いないが、あと3000円ほどでSmartShiftの使えるMX Revolutionが買えると思うと、微妙な価格設定かもしれない。筆者なら3000円高くてもSmartShiftの使えるMX Revolutionが欲しいと思うが、残念ながら持ち運びには適さない。かといってVX RevolutionもノートPC用マウスとしては比較的大ぶりな部類に入るから、持ち運ぶならもっと小型のマウスがよいと思う人もいるだろう。このあたりの感覚は人それぞれだから、実際に手にとって、自分の手で確認してから購入することをおすすめしたい。
さて、次のページではロジクール(正確にはLogitech)のエンジニアリングセンターがあるアイルランドはダブリン郊外を訪れ、今回の両“革命”マウスが生まれた経緯を探ってみた。
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